「スイスフランショック」は、2015年1月15日に、スイス中央銀行の政策変更により引き起こされた為替市場の大混乱のことを言います。
この際、「ユーロ/スイスフラン」をはじめとするスイスフラン絡みの通貨ペアが大きく乱高下。
レートを配信できずに取引停止に追い込まれるFX業者が続出し、空白価格帯が発生する「値とび」により、投資家もFX業者も大きな損害を被りました。
このスイスフランショックがなぜ起きたのか、当時の値動き、投資家への影響、FX業者の対応について詳しく解説していきます。
Contents
スイスフランショックとは?
「スイスフランショック」とは、2015年1月15日、スイス国立銀行による突然の金融政策の変更により引き起こされた、外国為替市場の世界的混乱のことを言います。
これはまさに、為替市場の歴史に残る大きな出来事のひとつ。
スイスフランショックがなぜ起きたのか、相場がどう反応したのかを見ていきましょう。
スイスフランショックはなぜ起きた?
スイスフランは、永世中立国という立場から、「安全通貨」と言われる通貨。
金融危機や戦争・テロなどの有事が起きたときに、逃避通貨としてよく使われます。
2009年にギリシャ債務危機が起きた際も、ユーロからスイスフランへ資産を逃避させる動きが強まり、ユーロ安スイスフラン高がすすみました。
しかし輸出の約50%がEU諸国であるスイスにとって、ユーロ安スイスフラン高は不利。
そこで2011年9月、スイスの中央銀行であるスイス国立銀行は、「1ユーロ=1.20フラン」を下限とすることを決定し、これを下回るときは無制限の外貨購入を行うと発表。
それ以降、「ユーロ/スイスフラン」が1.20を割り込みそうな時には、ユーロ買いスイスフラン売りの為替介入を幾度となく行いました。
ところが2015年1月15日の日本時間の6時半頃、突如、スイス国立銀行が「1ユーロ=1.20フラン」を下限とする金融政策の撤廃を発表。
これを受けて、「ユーロ/スイスフラン」が大暴落。「スイスフラン/円」「米ドル/スイスフラン」などのスイスフランがらみの通貨も、大きな影響を受けました。
この突然の政策変更の理由について、スイス国立銀行は次のように説明しています。
- 他の主要通貨に対してユーロ安が進み、スイスフランの割高感が小さくなったため
- 米ドル高スイスフラン安が進んだため
スイスフランショック後、相場はどう動いた?
スイス国立銀行の突然の「ユーロ/スイスフラン」の下限撤廃によって、配信レートが提示されなかったり、スプレッドが考えられないほど広がったりと、世界の外国為替市場が大混乱に陥りました。
影響の大きかった通貨ペアの、発表直後(2015年1月15日日本時間午後6時半頃)の値動きを見てみましょう。
※各FX業者によって配信レートが異なるため、今回紹介するチャートはその一例です
「ユーロ/スイスフラン」
「ユーロ/スイスフラン」は、2011年9月の「1ユーロ=1.20フラン」の下限設定が発表されて以来、「1.20」台で横ばいの動きをしていました。
しかし2015年1月15日夕刻ににこの下限設定の撤廃が発表されると、「1.20」台を割り込み、大きな下落がスタート。
その後取引を停止させる業者が多かった中、レートを配信し続けた一部の業者では、わずか数分で「1.20」台から「0.84」台へ急落。
約3600pipsの大暴落となりました。
「スイスフラン/円
※チャートは日本時間ではありません
発表後の20~25分間で、115円台から151円台まで、なんと36円も急騰!
その後の15分間で、今度は151円台から129円台へ22円も急落し、大相場であったことがわかります。
「スイスフラン/円」を売っていたらどうなった?
発表直後の36円もの急騰が引き起こした損失額は、まさに膨大!
下記の取引量ごとの損失額をみれば、それがわかるはずです。
<取引量ごとの損失額>
- ※必要証拠金・・・「スイスフラン/円=116.00」で算出
- 1万スイスフラン(必要証拠金:46,400円)の売りポジション→36万円の損失(レバレッジ25倍)
- 5万スイスフラン(必要証拠金:232,000円)の売りポジション→180万円の損失(レバレッジ25倍)
- 10万スイスフラン(必要証拠金:464,000円)の売りポジション→360万円の損失(レバレッジ25倍)
- 50万スイスフラン(必要証拠金:2,320,000円)の売りポジション→1800万円の損失(レバレッジ25倍)
- 100万スイスフラン(必要証拠金:4,640,000円)の売りポジション→3600万円の損失(レバレッジ25倍)
必要証拠金46,400円で1万スイスフランを売っていたトレーダーは、わずか数十分で、36万円の含み損が発生。
5万スイスフランで180万円、10万スイスフランで360万円と、取引量が増えるほど、損失も大きく拡大しているのがわかります。
しかもレートが急上昇している最中は、取引停止となったFX業者が多発したため、成行注文で損切りすることもできませんでした。
それどころか、逆指値注文やロスカット注文すら正常に機能しない事態に
その結果、多額の借金を背負う投資家が急増してしまったのです。
「米ドル/円」だったらどうなってた?
スイスフラン絡みの通貨ペアは日本ではさほどメジャーではないため、スイスフランショックによる日本人トレーダーへの影響は、ある程度限定されました。
しかしこれが日本人投資家の多くが取引をする「米ドル/円」で起きていたら、その破壊力は計り知れなかったでしょう。
借金を抱える投資家の数は今回のケースの比ではなく、その損害額も巨額となっていたはず。
まさに地獄絵図となっていたに違いありません。
「米ドル/スイスフラン」
※チャートは日本時間ではありません
発表後の15~20分間で、「1.02」台から「0.81」台まで、約2100pipsも急落。
その後の20分間で、今度は「0.81」台から「0.90」台へ約900pips急騰し、乱高下したことがわかります。
スイスフランショックが個人投資家に与えた影響とは?
スイスフランショックは、投資家に大きな損害を与えました。その影響を見てみましょう。
「値とび」により損害が拡大
スイス国立銀行が「ユーロ/スイスフラン」の下限を突然撤廃した直後、主要通貨に対してスイスフラン高が急激にすすみ、インターバンク市場が混乱。
多くのFX業者がレートを配信できず、取引停止に追い込まれる事態に発展しました。
時間が経ってからレートが配信されたときには、前回の配信レートより大きく下回って価格が提示されるという「値とび」が発生。
この値とびが、多くの投資家に予想外の大きな損害を与えました。
なぜ損害が拡大したのか、例を見てみましょう。
逆決済注文が注文価格を下回って約定
リスク管理のひとつに、「逆指値(ストップロス)注文」があります。
これは、自分の思惑とは逆に相場が動いたときのために、保有ポジションの損失を限定するための注文のこと。
今回、逆指値注文が設定どおりに約定されないケースが多発し、損害が拡大しました。
発表前レート
↓
発表後レート
↓ (レート配信あり)⇒逆指値注文①→設定価格で約定
値とびがスタート
↓ (レート配信なし)⇒逆指値注文②→設定価格で約定できない
値とび後初値 ⇒この価格で逆指値注文②が約定=損失拡大
逆指値注文①の場合は、レートが配信されていた時に設定価格に達したため、注文通りに約定。
損切りは予想範囲内で確定しました。
しかし逆指値注文②の場合は、設定価格に達する前にレートの配信が止まり、「値とび」が発生。
「値とび」後に初めて配信されたレートで注文が約定されました。
このレートが設定価格よりも大きく下回っていたため、予想外の大きな損失がでることになったのです。
ロスカット水準を下回って決済され、追証請求されるケースも
ロスカットは、一定の顧客資金を守るための措置。
証拠維持率がFX業者の定める数値に達する、顧客の保有するポジションが強制決済されるシステムです。
しかしスイスフランショックで起きたロスカットでは、顧客資金を保全できないという現象が発生しました。
<ロスカットの執行例>
発表前レート
↓
発表後レート
↓(配信レートあり)⇒ロスカット①→設定水準で執行
値とびがスタート
↓(配信レートなし)⇒ロスカット②→設定水準で執行できない
値とび後初値 ⇒この価格でロスカット②が執行
↓
- 証拠金の多くを失う
- 証拠金以上の損失を出す→追証を請求される
ロスカット①の場合は設定水準にレートが達したため、予定どおりに執行されて一定の顧客資金が守られました。
ところが「値とび」がおきた価格空白帯にロスカット水準があったロスカット②の場合は、設定価格ではなく「値とび」後の初値で執行。
そのレートがロスカット水準をはるかに下回っていたため、損害が拡大し、顧客資金を保全することができなかったのです。
その結果、証拠金の多くを失ったり、証拠金がマイナスになって追証を請求されたりする投資家が続出しました。
スイスフランショックにFX業者はどう対応した?
このスイスフランショックにより、FX業者も大きな損害を被りました。
しかし国内FX業者と海外FX業者とでは、顧客対応が大きく異なりました。その違いを見てみましょう。
国内FX業者の対応
今回、ロスカット水準を大きく下回って強制決済されたために、証拠金がマイナスになる投資家が多くいました。
国内FX業者は、このような投資家に対し、マイナス分の損失額の追証を請求。
その結果、多額の借金を背負うことになった投資家も多く、一部では裁判にまで発展しました。
海外FX業者の対応
海外FX業者の多くが、ゼロカットシステムを採用しています。
これは、万が一証拠金を上回る損害がでて口座残高がマイナスになっても、自動的に「0」へリセットしてくれるサービス。
今回の歴史的な大相場で効力を発揮したのが、まさにこの「ゼロカットシステム」です。
これにより、投資家が被った損害のうち、証拠金を超える損害分は全てFX業者が負担。
投資家の損害は自分が入金した証拠金のみとなり、国内FX業者のように追証を求められることもありませんでした。
その結果、英国の大手FX業者「アルパリ」は、業者自体の損失が膨らみ破産申請を出す事態に。
しかし、公約通り顧客に追証を求めず、信託保全されていた顧客資金も全て顧客に返還すると約束したこの「アルパリ」の企業姿勢は、評価に値するといって良いでしょう。
XMはゼロカットシステムの継続を宣言!
日本のトレーダーからも大きな支持を集めるXMは、スイスフランショックの際にゼロカットシステムの継続を宣言し、高い評価を受けました。
XMから出されたお知らせを見てみましょう。
このお知らせのポイントは、2つあります。
- ゼロカットシステムが機能している
- 倒産のリスクはない
1つ目ポイントは、スイスフランショック時でも、顧客に公約した通りゼロカットシステムがきちんと機能していること。
これにより顧客の損失額は入金額のみにとどまるので、追証を請求されることなく、引き続き安心して取引をすることができます。
2つ目のポイントは、スイスフランショックによる業者への影響はないということ。
ゼロカットシステムを採用するということは、顧客の損失の一部を業者が肩代わりすることを意味します。
その結果、業者自体の損失が膨らみ、破産へと追い込まれるFX業者もでました。
しかしXMは、このスイスフランショック時でも経営は盤石であり、倒産のリスクはない、と宣言したのです。
追証がない海外FX業者のほうが安全!
今回のスイスフランショックから、私たちが学ぶべき教訓はたくさんあります。
そのひとつは、顧客資金を本当に守ってくれるのは「ゼロカットシステム」だということです。
「ロスカット」も「ゼロカット」も、顧客資金を保全するためにFX業者が提供するサービス。
しかし「ロスカット」は、今回のような大相場で「値とび」が発生したときには、設定価格で執行されず、証拠金を上回る損失がでることが判明。
このときに命運を分けるのが、「ゼロカットシステム」を採用しているかどうかです。
ゼロカットシステムを採用しない国内FX業者は、証拠金を上回る「損失」の追証を顧客に請求します。
一方ゼロカットシステムを採用する海外FX業者は、この損失分を負担してくれるので、顧客の損害は入金した証拠金のみですみます。
国内FXの方が海外FXよりも安全だと思われていますが、いざというときに顧客資金を守ってくれるのは海外FXだということを、覚えておきましょう。
XM(エックスエム)
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